ECカートは比較が大事!ASPカートの選び方を経営コンサルが解説します
経営&ECの二刀流コンサルタント、中小企業診断士の塩島です!
自社でネットショップを始める際、強い味方になってくれるのがカートシステム。近年はECカートにも様々なサービスが登場し、自社の状況に合わせて最適なものを選べるようになりました。
しかし選択肢が多様化しているのは良いものの、EC初心者の事業者様はどのカートシステムを選んでよいかがわかりづらく、始める前から悩んでしまうのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、皆様の状況に合わせたASPカートの選び方を徹底解説します。
これからEC事業を始めたいという事業者様はもちろん、ECモールから自社サイトへの展開を検討している事業者様も、これを読めばカートシステムの基本的な選び方がわかると思います!
目次
ECカートシステムを選ぶための基礎知識
ASPカートとは
自社専用のECサイトを運営するために必要となる様々な機能について、セットで提供しているサービスのことをASPカートと呼んでいます。ECカートシステムという言葉は、ASPカートのことを指している場合が多いです。
具体的な機能の例としては、商品登録、注文管理、決済機能、在庫管理、顧客管理などが挙げられます。いずれもネットショップを運営する上で必要不可欠なものであり、全てが揃っているASPカートはとっても便利な存在。そのためEC初心者から上級者まで、多くのユーザーに利用されています。
ASPカートはデザインテンプレートや拡張機能が用意されていることも多く、自社の商材や方針に合わせて適したものを選ぶことができ、比較的簡単にカスタマイズすることができます。
ちなみに「ASP」という単語自体は、ソフトウェアをクラウド(=インターネット上)で提供するサービスのことなので、ECカートシステムに限らず様々な分野で用いられています。覚えなくても大丈夫ですが、「Application Service Provider」の頭文字をとった略称です。
中小事業者様がECサイトを始める場合、ASPカートは有力な選択肢の一つとなっています。とはいえネットショップを作る方法は他にもありますので、もし気になる方はこちらの記事も見てみてください。
ASPカートのメリットとデメリット
ASPカートを使用するメリットはとても多いです。
まずプログラミングやシステムに関する専門知識が無くても、ネットショップを比較的簡単に立ち上げることができます。クラウド上で提供されるため、自分のパソコンにインストールする必要はないですし、サーバーなどの準備も最低限で済みます。
種類にもよって差はありますが、直感的に操作しやすい管理画面や、操作方法が網羅されたマニュアルも用意されていることが多いです。EC初心者の事業者様にとって、こういった点は嬉しいポイントになるはずです。
また1からサイトを構築する場合と比べて、初期費用を大幅に抑えることができるのも大きなメリットです。予算が限られている場合は、選択肢がASPカート一択という場合も多いでしょう。初期費用だけでなく、システムやセキュリティの更新も任せられるため、維持コストも抑えることができます。
一方のデメリットとしては、デザインや機能のカスタマイズ性が低いという点が挙げられます。
とはいえテンプレートや拡張機能の充実しているASPカートであれば、完全に自由とまではいかないものの、かなり柔軟なカスタマイズを実現できるものもあります。
ASPカートの選び方の基準となる要素
ASPカートを選ぶ上で、大きな基準となるのが機能面とコスト面です。
ECサイトを運営するための最低限の機能は、どのASPカートにも備わっています。しかし自社が理想とするサービスを実現するための機能や、自社の扱っている商材に適した機能があるかは、導入前によく確認しておく必要があります。
またASPカートの種類やプランによって、利用料金は大きく異なってきます。機能が充実しているからといって、コスト面を考慮せずに高額なサービスを選んでしまうと、将来の損益に大きな影響を与えることになりかねません。
ちなみにASPカート以外にも、ECサイトの始め方はいくつかあります。以下の記事にまとめているので、よかったら読んでみてください。
機能面でのASPカートの選び方
前述のとおり、ASPカートにはECサイトを運営するための基本的な機能が備わっています。
しかし同じ名称の機能であっても、ASPカートの種類によって内容が大きく異なる場合もあるので注意が必要です。ここではASPカートを選ぶ上でチェックしておきたい、機能面のポイントとなる部分について具体例を挙げながら解説していきます。
商品管理機能
販売する商品の名前や価格、説明文といった要素を管理する機能です。
こういった要素を設定できること自体、サービスによって大きな違いはありませんが、日々の運営の上での使いやすさに大きく影響してきます。特に商品数が多い場合、商品管理機能の役割は重要となります。
例えば100個の商品を扱っているお店が、「全品10%OFFセール」を実施する場合を考えてみましょう。すべての商品の価格を変更するため、100個分の商品管理ページを一つ一つ手作業で更新していたら、かなりの時間が浪費されてしまいますよね。たとえ10個だとしても、なかなか辛いものがあります…。
そこで多くのASPカートでは、複数商品の情報を一括で更新できる機能が用意されています。
エクセル等で編集できるcsv形式のデータを使って、情報を更新したファイルをアップロードして反映させるような形が多いです。最初は戸惑うかもしれませんが、慣れてしまえば全然難しくありません。
商品の一括更新機能は、たいていのASPカートで提供されています。しかしその仕様や使いやすさは様々なので、どのような方法で更新するかを導入前に把握し、ASPカート選びの判断材料にするとよいでしょう。
在庫管理機能
商品の在庫数を設定し、注文が来た数をリアルタイムで反映する機能です。
この機能があることにより、受注数が在庫数を上回ってしまう「在庫切れ」トラブルを回避できます。EC運営の上では必須となるため、どのASPカートでも在庫管理機能は備わっているはずです。
在庫管理については、さらに便利な機能がついているサービスもあります。例えば在庫が一定数を下回った際、自動的にアラートを送ってくれる機能があると、売り切れを防ぐための迅速な在庫補充が可能となります。
また倉庫や拠点が複数存在し、在庫を共有しているような場合は、それらを一元管理するシステムが必要となります。将来的に店舗を増やす場合も、一元管理システムがあるかどうかによって、ネットショップ運営の効率性は大きく異なってくるものです。
既に自社で何らかのシステムを導入している場合は、ASPカートとの連携に対応しているかは重要なポイントとなります。連携できたとしても互いの相性が悪く、反映までに長い時間がかかるようなこともあります。
こういった問題を解消したり、連携のために独自の仕組みを開発するとなると、大きなコストがかかる可能性があるので注意が必要です。
注文管理機能
お客様から頂いた注文情報を管理する機能です。新規受注をスタッフが確認するところから、出荷を手配して決済完了に至るまでの一連の処理を管理できます。
受注処理はヒューマンエラーやトラブルが付き物なので、ミスを防ぎスムーズな運営体制を構築することが、顧客満足度や業務効率化の面でも大きく影響してきます。そういった面に加えて、受注データを適切に収集・蓄積するという点でも、注文管理機能が果たす役割は重要です。
注文管理機能もASPカートの標準的な機能ですが、サービスによって違いが大きい部分です。
特に一日に多くの注文が予想される場合や、特殊な項目の管理が必要な場合は、注文管理機能の充実度がポイントとなります。どのような仕様になっているかは、導入前によくチェックしておきましょう。
デザイン機能
商品の魅力や販促の効果を最大化するために、ECにおいてページデザインの役割は重要です。
トップページなど、商品ページ、カテゴリページ、ECには様々なページがありますが、ASPカートにはこれらのページをデザインするための機能が備わっています。そしてデザイン機能の自由度や使いやすさは、ASPカート選びの際に十分な検討が必要なポイントです。
ネットショップにおけるページデザインは、お客様の購買意欲に直接影響を与えるため、本来は妥協せず作り込むのが望ましいです。しかしながら前述のとおり、ASPカートではデザインの自由度が限られています。
そこで「制約の範囲内で最大限に良いデザイン」を目指すことになるのですが、デザイン機能が大きく影響してくることになります。
多くのASPカートでは、デザインテンプレートというものが用意されています。テンプレートを使うことにより、専門知識がなくても美しいデザインのネットショップを構築できるのは嬉しい点です。こういったテンプレートの種類やカスタマイズ性は、サービスによってかなり異なるポイントです。
またデザイン機能においては、HTMLやCSSといった、WEBページを作る言語が使えるかどうかも注目しましょう。というのも、こういった言語の編集が可能であれば、ASPカートでも理想とするデザインにかなり近づけられるからです。
ただしこれらの言語を使いこなすには、コーディングの専門知識が必要となります。使える人が社内にいるとベストですが、難しければアウトソーシングで対応するという手段もあるのでぜひ検討しましょう。
チェックしておきたいその他の機能
ECカートシステムには決済機能も欠かせません。クレジットカードやキャッシュレス決済の有名なものは、たいていのASPカートで導入できるようになっています。ただしマイナーな決済サービスを使いたい場合は、サービスによって対応できない可能性があるのでチェックしておきましょう。
また大量の商品を扱う予定であれば、商品登録数の上限についても注意が必要です。商品登録数が一定量を超えると、プラン変更や追加料金が必要となるサービスもあります。
他にもSEO対策の充実度、定期購入機能、外部システム連携など、事業者様によってチェックしておくべきポイントはいろいろあります。自社にとって必要な機能は何かを考え、導入前に洗い出しをしておくことをおすすめします。
コスト面でのASPカートの選び方
ASPカートで発生するコストは、初期費用、月額費用、手数料の3つに分けられます。
EC事業を運営していく上では、これらのコストをしっかりと計算しておくことが非常に重要です。以下の内容を把握して、きちんと利益が出るラインを考えていきましょう。
初期費用
ASPカートの利用開始時にのみ請求されるコストです。この初期費用は、ASPカートの種類やプランによって大きく異なる要素であり、無料のものから高額なものまで幅広く存在します。
初期費用が無料であれば、それだけ導入のハードルは低くなります。一方で初期費用が高額なものは、機能やカスタマイズ性が充実しているサービスが多いです。
また初期費用には、ショップ開設に伴う設定作業やカスタマイズ作業の費用も含まれることがあるため、事前に具体的な内容を確認することが重要です。これらの作業をサポートスタッフがやってくれるという点では、初期費用は適正なコストと捉えられるかもしれません。
さらに一部のASPカートでは、初期費用を支払うことで長期的なコストを抑えられるケースもあります。例えば初期費用を支払うことにより、後述する月額料金が割引されるような場合もあり、全体的なコストパフォーマンスが向上することがあります。
月額費用
ASPカートの料金体系は、一般的に月額のサブスクリプションという形態をとる場合が多いです。
金額はASPカートによって様々ですが、無料というサービスも存在します。ただし月額無料で提供される機能は、ECカートシステムとして最低限のものであることが多く、できることは限られているはずです。
一般的には月額費用が高いほど、ASPカートとしての機能も充実している傾向にあります。高度な分析ツールやカスタマイズオプションを備えていたり、運営面のサポート体制が充実しているものもあります。こういったASPカートは、確かに利便性が高く魅力的に見えます。
しかし自社にとって本当に必要な機能であり、それに見合った対価であるかどうかは、導入前によく考えておくべきです。どうしても必要な機能でなければ、そこに支払う費用を広告費・販促費に回した方がよいかもしれません。
月額費用は、ASPカートを利用する上での固定費となります。経営的な視点からすると、固定費は少ないに越したことはないものです。商材の収益性や成長計画なども考慮し、無理なく適切な料金のサービスを選ぶようにしましょう。
手数料
ASPカートを利用する上では、決済手数料や販売手数料といった手数料が発生します。
これらの手数料というものが、EC事業を運営していく上での「クセ者」です。基本的に売上金額に対して、一定の割合で発生する変動費という形をとるため、売れれば売れるほど手数料も増えていきます。手数料の割合の分だけ利益率が減少する、という認識をしていただけると良いでしょう。
手数料の金額も、サービスやプランによって様々です。月額費用が無料、もしくはかなり安いという場合は、手数料が高く設定されているケースが多いです。反対に月額費用は高額である一方、手数料は低いというパターンもあります。
また○○手数料などの名目で分かれていたり、一目でわかりづらい案内になっていることもあります。そのためASPカートを選ぶ際には、売上に対して合計何%の手数料が発生するのか、確実に見逃さないように心がけましょう。
EC事業者様の財務諸表では、支払手数料の勘定科目が突出していたりします。それだけ手数料というのは、EC事業の経営にインパクトが大きい項目です。しかし今までの支援経験上、この手数料を甘く見てしまっている事業者様も多く見受けられます。
とにかく月額費用も手数料も、サービスを利用する上で節約のしようが無いコストとなりますので、導入前によく比較検討して選ぶべき部分です。
主要なASPカートの一覧
これまでの選び方のポイントを参考にして、実際にASPカートの提供内容を見てみましょう。
日本で展開されている主要なASPカートを一覧にまとめました。なおプランや料金は随時変更されている可能性があるので、それぞれのリンク先から最新情報を確認してください。
ASPカート名称 | 備考 |
Shopify | 高機能で拡張性が高い、越境ECも可能 |
BASE | 月額無料プランあり、有料プランは機能充実 |
STORES | 月額無料プランあり、個人・小規模事業者向け |
カラーミーショップ | 月額費用が安い、初心者でも簡単に使える |
MakeShop | カスタマイズ性高い、機能豊富でリーズナブル |
futureshop | デザインの自由度が高く多機能、サポートも○ |
Eストアーショップサーブ | サポート体制が充実、初心者でも運用が安心 |
W2Repeat | リピート通販・サブスクリプションに特化 |
ecforce | 柔軟性高くカスタマイズが充実 |
らくうるカート | ヤマト運輸の物流サービスと連携しやすい |
メルカート | クラウド上のプラットフォーム |
サブスクストア | 定期通販・サブスクリプションに特化 |
リピスト | リピート通販に強い、D2Cに特化して発展 |
イージーマイショップ | セット販売、オーダーメイド販売に強い |
Cafe24 | 越境ECに強い、低コスト運用可能 |
おちゃのこネット | 月額無料プランあり、全体的に低コスト |
楽々リピート | リピート通販に特化、従量課金なし |
カートシステム選びがEC事業の成否を分ける
最後にASPカートを選ぶ上で覚えておきたい注意点として、「後から他のASPカートに乗り換えるのはすごく大変である」ということをお伝えしておきます。
今までの支援事例においても、ASPカートの導入後に不満な点に気づき、他に乗り換えたいというご相談は意外とよくあります。しかし基本的にASPカート同士の互換性は無いので、移行の際には膨大な手間がかかりますし、それに伴うコストも軽視できません。
さらに乗り換えの際には、他のサービスにドメインを引き継げないという場合が困りものです。
違うドメインで新たに出店するとなると、SEOが弱体化したり、多くのお客様を逃してしまう可能性が出てきます。古いドメインから新しいドメインに飛ばす「リダイレクト」という手法もありますが、ASPカートによってはリダイレクトができない仕様だったりします…。
こういった点をよく考慮せずにASPカートを決めてしまうと、後で大きな後悔をすることにもなりかねません。
自社に最適なサービスを選べるかは、EC事業の成否を分けると言ってもいいでしょう。
選び方のポイントについてはこの記事でお伝えしたとおりですが、イメージが沸かない部分も多いと思います。もし自社で選ぶのに不安があるなら、無理せずEC事業に詳しいコンサルタントに相談しましょう。
我々はECカートシステムはもちろん、販促やマーケティングといった部分だけでなく、経営全般についてご相談いただけるコンサルタントです。一部の場合を除き、基本的には経済産業省登録の中小企業診断士が対応しております。
もしお困りであれば、ぜひ右下のボタンから無料相談をお申し込みくださいね。
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