中小企業が知っておきたい広告の基本。上手な広告の活用方法とは

中小企業が知っておきたい広告の基本。自社が活用すべき媒体は?

経営資源の限られた中小企業。大企業を含む強力なライバルたちと、市場で競合していくためには、独自の強みや特色を上手く伝える広告戦略が必要不可欠です。広告予算やリソースが限られている状況の中で、中小企業はどのように広告を活用していくべきなのでしょうか。この記事では、中小企業が予算とリソースをフル活用して、最大の広告効果を得るための具体的な方法を、経済産業省登録の中小企業診断士がご紹介します。

中小企業にとって、広告は重要な情報発信手段

中小企業にとって、広告は重要な情報発信手段

広告は企業の「声」です。製品やサービスの価値を消費者に伝える手段として、またブランドのイメージを形成するツールとして、企業にとって非常に重要な役割を果たしています。独自の価値や魅力を活かすべき中小企業にとっては、それを広く伝えるためのチャネルとして、広告は大きな味方となります。

デジタル化の波が押し寄せる以前から、世の中は多くの広告であふれていました。現在はSNS広告、検索エンジン広告、インフルエンサーによるアフィリエイト広告など、その選択肢はより豊富なものとなっています。しかし、どの手法を選ぶか、そしてどのようにその手法を活用するかは、ターゲットとする顧客層や商品・サービスの特性、そして予算によって大きく変わってくるのです。

この記事が中小企業の皆様にとって、広告に関する課題や疑問の解決、効果的な広告活用のヒントとなれば嬉しいです。

中小企業が広告を活用するメリット

中小企業が広告を活用するメリット

市場のシェア、ブランド認知度、財政力などの面で、大企業にはどうしても遅れを取る中小企業。しかし広告を適切に活用することで、自社の店舗の集客力を強化し、競争に立ち向かう力を身につけることができます。もちろん大企業ばかりでなく、ライバルの中小企業との競争においても、広告は強力な武器となってくれます。以下では広告について、その主なメリットを見ていきましょう。

地域での認知度向上

中小企業は地域密着型であることが多いと言えます。その特性を活かし、地域に根ざしたアピールを取り入れた広告は、地域住民の心にも響きやすいものです。地域限定のサービスや商品を強化し、地域の人々に向けて広告を打つことで、効果的に認知度を上げることができます。古くからあるチラシやポスターといった手法の他に、デジタル広告を活用することによっても、ターゲットとする地域の人々への訴求が可能となるでしょう。

新規顧客の獲得

広告は新しい顧客を引き寄せる力があります。特に中小企業の場合、独自の商品やサービスの魅力を伝えることで、新しい市場や顧客層を開拓する余地は大きいはず。定期的に広告を出稿することにより、業界のライバルに負けない存在感を確立し、新しい顧客の獲得に繋げることができます。

顧客ロイヤルティの強化

広告は新規顧客のアプローチだけとは限りません。一度購入した顧客との関係性を、維持・強化する手段としても活用できます。よくある手法としては、リピート購入を促すためのクーポンや特典を広告で伝えることで、顧客のロイヤルティを高めることができます。

差別化の訴求

中小企業の独自の強みや特色は、広告を通じて強調して消費者に伝えることで、競合との差別化を強化できる可能性があります。訴求するポイントとしては、商品へのこだわり、独自のストーリー、歴史、価値観などがおすすめ。こういった要素を広告に取り入れることで、消費者のロイヤルティを確立し、深い結びつきを築くことができます。

データ収集と戦略的な意思決定

デジタル広告を活用することで、消費者の反応や興味、行動をデータとして収集することができます。このデータを基に、より効果的な広告戦略やビジネス戦略を考えることができます。これは大手企業に限った話でなく、限られたリソースを効果的に活用するためのファクトとして、中小企業にとっても非常に価値があるものです。

信頼性の向上

定期的に質の高い広告を出稿していれば、企業の信頼性や安定性といった面をアピールすることができます。中小企業は新しい顧客にとっては未知の存在であることが多いため、広告を通じてその信頼性を確立することは非常に重要です。

中小企業が知っておくべき広告のデメリット

中小企業が知っておくべき広告のデメリット

集客のための強力なツールとして、既に広告を活用している中小企業は多いです。しかし広告には、メリットだけでなくデメリットも存在します。中小企業が広告を効果的に利用するためには、そのリスクも無視せずにデメリットを正しく理解し、適切に対処することが不可欠です。正しい知識と戦略を持つことで、広告のリスクを最小限に抑え、そのメリットを最大限に引き出すことが可能となるのです。以下では、中小企業が知っておくべき広告のデメリットについて詳しく解説します。

広告費負担

広告の一番のデメリット、といえばこれですね。大手企業と比較して予算が限られている中小企業にとって、広告にかかる費用は大きな負担となりがちです。特に広告の効果が出るまでの期間や、ROI(投資対効果)が不確実な場合、経営に影響を及ぼすリスクが高まります。後述しますが、自社にとっての広告費の適正額は、きちんと見定めることが必要不可欠となります。

不適切なターゲティング

広告を打つ際のターゲティングが不正確であると、意図しないターゲットに広告が露出するリスクがあります。これにより、無駄な広告費が発生するだけでなく、ブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。AIがこれだけ発達した現代でも、デジタル広告で意図しないターゲティングが行われる、といった話はよく聞かれるので注意しましょう。

過度な期待値の醸成

広告によって商品やサービスの魅力を過度にアピールすると、消費者の期待値が高まります。これに対して、実際の商品やサービスが期待に応えられない場合、顧客の失望や不信感を招くリスクが生じます。広告で顧客が離れてしまっては本末転倒ですので、事前の期待を高めすぎないような注意が必要です。

価格競争の誘発

広告を通じて価格を大きくアピールする戦略は、消費者を引きつける一方で、競合との価格競争を引き起こす可能性があります。結果として、収益率の低下や価格戦争に巻き込まれるリスクが高まります。ネットショップの検索結果を見てみると、多くの商品ジャンルでこのような競争過多により、熾烈な価格競争が巻き起こっていることがよくわかります。

様々な潜在リスク

デジタル広告は多くの中小企業にとって手軽に利用できる手段ですが、クリック詐欺や不正確なターゲティング、プライバシー問題など、さまざまな課題を孕んでいます。適切な知識やツールを持たずにデジタル広告を活用すると、期待した効果を得られない可能性が高まります。2023年10月からはステマ規制(ステルスマーケティング規制)など、新たな法整備も進んでいるため、違反しないように留意する必要もありますね。

ブランドイメージの変動

広告を通じて発信するメッセージは、企業のブランドイメージに大きな影響を及ぼします。広告内容が不適切であったり、消費者の感じるギャップが大きい場合などは、ブランドイメージの低下を招く可能性もあります。

依存のリスク

広告の効果に頼りすぎることで、他のマーケティング手段や自社の独自性の追求を怠るリスクがあります。これにより、広告を打たない場面での競争力が低下する恐れがあります。広告をストップした瞬間に、売上が激減して資金繰りに支障をきたすような状態は、非常にリスクが高いため改善すべきでしょう。

広告の種類と特徴について

広告のメリットとデメリットを理解したところで、よく知られている広告の種類を確認しておきましょう。広告には様々な媒体があり、それぞれの特徴が異なります。中小企業が自社に合った広告戦略を考える際、これらの特徴を理解することは非常に重要なポイントです。以下、主要な広告媒体の特徴を簡単に解説します。

テレビ広告

テレビ広告は、広範囲の層をカバーすることができ、インターネットがこれだけ普及した現在も、強力な威力を持っている広告です。その一方で、制作費や放送費が高額になるため、中小企業が活用するのは現実的ではないことも多いのが実情。視覚と聴覚の両方を刺激するため、情報伝達やブランドのイメージ形成に非常に効果的です。また、特定の番組や時間帯を選択することで、ターゲット層を絞り込むことも可能となります。

ラジオ広告

ラジオ広告は、移動中や作業中のリスナーにアプローチできるという特徴があります。製作費はテレビ広告に比べて低く抑えられるため、頻繁に放送して接触回数を増やすことで、リスナーの記憶に残りやすくする戦略がとれます。また、地域性が強いため、特定のエリアに特化した広告を打つことが可能です。

新聞広告

新聞広告は情報量が多く、読者がじっくりと情報を取得することができるため、詳細な情報提供に向いています。地域の新聞を活用することで、地域密着型の広告が効果的に打てます。一方、全国紙を利用すれば、全国規模でのブランド露出も期待できます。

雑誌広告

雑誌広告は、ターゲットとする読者層が明確であり、高いデザイン性を活かした広告表現が可能です。また、雑誌の特性上、長期間保存して読み返す読者も多く、長い期間にわたる露出が期待できます。発行部数の多い人気の雑誌なら、専門分野での認知度拡大効果も高いでしょう。

屋外広告(OOH)

屋外広告は、特定の場所での高い露出を狙うことができます。通勤や移動中の人々の目に止まりやすいため、シンプルでインパクトのあるメッセージが効果的です。バブル期にはイルミネーションなどで装飾したド派手看板も多かったですが、最近はすっかり見かけなくなりましたね。

交通広告

交通広告は、バスや電車、タクシーなどの車両に広告を掲載します。移動中の人々の目に触れる時間が長いため、リピート露出が期待できます。また、特定の路線や車両を選ぶことでターゲット層を絞り込むことが可能です。運転中に前の車がバスだったりすると、掲載されている広告の内容が、イヤでも記憶に残りますよね。

スポンサー広告

スポンサー広告は、イベントやスポーツチームへの支援を通じてブランドの露出を狙う手法です。関連性のあるスポンサー活動を選ぶことで、ブランドイメージの向上やファンとの深いつながりを築くことができます。

デジタルサイネージ広告

熱い注目を集めているのが、電子ディスプレイを使ったデジタルサイネージ広告。お店の看板代わりとしてだけでなく、今まで広告スペースとしては認知されていなかった場所にも手軽に設置することができ、そのポテンシャルが期待されています。マスマーケティング的な情報発信から、特定の層に絞った認知拡大まで、様々な目的で使われています。最近は商業施設、タクシーの中、さらにトイレの中まで、ディスプレイを見かける機会が増えてきましたね。

WEB広告

WEB広告は、インターネット上のウェブサイトやSNSなどで展開される広告で、ターゲットの行動や興味に応じて細かくセグメント化して広告を配信することが可能です。また、広告効果の計測や最適化がリアルタイムで行えるため、効果的な広告運用が期待できます。なおWEB広告については、あまりに多様で奥が深く、ここではとても書ききれないので、また別の記事で詳細に解説します。

中小企業が上手に広告を活用するポイント

中小企業が上手に広告を活用するポイント

これまで見てきたように、広告の種類や特徴は多岐にわたるため、どの方法を選択すれば良いのか悩む企業も少なくありません。中小企業が上手に広告を活用するためのポイントを紹介します。

ターゲットを明確にする

広告を効果的に活用するためには、まず自社のターゲットを明確にすることが必要です。ターゲットとなる顧客層が誰なのか、そのニーズや関心事は何かを理解し、それに合わせた広告を作成することで、効果を最大化することができます。そして自社のターゲットや目的に合わせて、最適な広告媒体を選択することも重要となります。

メッセージを明確にする

一見して何が言いたいのかわからない文章は、最後まで読む気が起きませんよね。広告についても同様で、伝えたいメッセージや情報が明確でなければ、消費者の関心を引き付けることは難しいでしょう。自社の強みや特徴、商品やサービスのメリットなどを十分に訴求しつつ、わかりやすく印象に残る広告を作成することが重要になります。

定期的な分析と改善をする

広告の効果は定期的に分析し、必要に応じて改善を行うことで、より良い結果を得ることができます。特にデジタル広告の場合、アクセス数やクリック数などのデータを基に効果を分析し、改善点を見つけ出すことが可能です。

不安であれば専門家に頼る

どのような広告を選べばいいか自信が無い場合は、専門家に相談するのが近道です。広告の運用代行会社や、コンサルタントなどに相談することで、自社に合った最適な広告戦略を構築することができるでしょう。ただしこういった会社の中には、知識が無い中小企業を騙して不当に利益を得ているような、悪質な業者も存在するため注意が必要です。

広告予算の調整にも注力を

広告予算の見極めも重要なポイント

広告の内容が大切なのは言うまでもありません。しかし同じくらい、もしかしたらそれ以上に重要なのが、どれくらい広告費をかけるかという広告予算の見極めです。

広告費の適正な割合を検討するにあたっては、売上との比率で算出した「売上高対広告費比率」が用いられます。売上の何%を広告に投資するべきか、という観点で判断するわけですね。

広告費と売上の適切な比率は、業界や企業のライフサイクル、戦略的目的によって異なりますが、一般的な考え方を以下に示します。

ここで注意しておきたいのが、適切な広告費は企業によって異なるため、本来は一概に言えるものではないということ。変動の大きい中小企業であればなおさら、自社の状況に応じて見極める必要があるため、一般論をそのまま鵜呑みにしないよう注意が必要です。

業界の基準を理解する

業界の平均的な広告費比率は、自社にとっても大いに参考になります。例えば食品やアパレルなどの業界では、広告に比較的多くの予算を割く傾向があります。その一方で、B2Bメインの製造業などでは、広告費比率が低めになることが多いです。

企業や商品の成熟度

スタートアップの企業や、新製品のローンチで広告をかける場合は、市場認知の獲得が重要となります。このような成長期初期には、潤沢な広告費が必要になる場面も多いです。一方で成熟企業であったり、市場でのポジションが安定している商品は、必要以上に広告をかけるべきではないでしょう。ただしこのようなお話も、ある一つの考え方に過ぎません。例えば立ち上げ時からリソースの乏しい企業では、広告に頼らない事業計画も一考すべきです。また成熟した商品においても、リマインダー型広告と呼ばれるような、「消費者に忘れられない」ことが目的の広告が積極的に活用されることもあります。

売上以外の目的による広告

広告の目的は、売上拡大だけではありません。ブランド認知やリピート率の向上など、売上以外の要素を目的とした広告運用も、販売戦略の一つとして検討する価値があります。リソースの限られた中小企業では、広告にかける予算がどうしても慎重になりがち。しかし時には、もちろん無理の無い範囲という前提で、赤字覚悟&利益度外視の広告をかけるべき場面もあるのです。

ROIの測定

特に継続的な広告においては、投資回収率(ROI)を測定することにより、適切な予算を見直すことが必要です。効果が高い広告チャネルには予算を増やし、低いものからは撤退するといった具合に、ROIに基づいた戦略的な判断が求められます。

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