ネットショップの開業前に要確認、失敗しないコツを経営目線で解説します

ネットショップの開業前に要確認、失敗しないコツを経営目線で解説します

経営とECの二刀流コンサルタント、中小企業診断士のむじな社長です。

ネットショップ開業を考えておられる事業者様、事前の準備は万全でしょうか?近年、ECサイトを運営する企業は増えていますが、その一方で撤退している企業も少なくありません。競合が全国に広がるECの世界では、激しい競争が日夜繰り広げられており、「こんなはずじゃなかった…」と後悔する事業者様も多いようです。

しかしECでの正しい手法を学んで、開業前からしっかりと準備しておけば、中小事業者様でも成功のチャンスは十分にあります。ネットショップを開業から成功に導くためには、実店舗とは異なる独自の戦い方だけでなく、経営目線での様々な準備が必要不可欠です。

この記事ではネットショップ開業予定の皆様に向けて、失敗しないためのチェックポイントをお話ししていきます。開業も後から、「こうしてばよかった!」と後悔しないためにも、今のうちに最低限の準備を進めていきましょう。

ネットショップ開業前の市場調査

ネットショップ開業前の市場調査

ネットショップに限った話ではないですが、市場調査はあらゆるビジネスの様々な段階で重要なプロセスです。市場調査によって得られた情報は、ビジネス成功の鍵になると言っても過言ではないでしょう。

本章ではネットショップの成功のために欠かせない、市場調査の考え方を解説していきます。

競合他社の販売戦略

ECではインターネットを通して、競合他社の価格や品揃えが一目瞭然で把握できます。

それどころか、WEBページに販促の案内が残っており、販売戦略が丸見えになっていることも多いので、競合店舗を覗いておいて損はありません。「日曜日までもれなく○○をプレゼント」などの文言が商品名に入っていれば、今まさに販促施策の実行中であることがわかります。

このような他社の成功事例を模倣することもよいですが、敢えて別の手法をとることにより、自社の差別化を実現するヒントにもつながります。同じ商品ジャンルにおいて、どのようなネットショップが成功しているのか、どのような売り方が支持されているかは、開業前から最低限調査しておくべきポイントです。

ターゲット顧客の理解

ターゲットとなる顧客のニーズや購買動機についても、十分に調べておくことが重要となります。

実店舗を長く運営されている事業者様であれば、消費者のニーズを理解しているという点において、自信を持っている方も多いかもしれません。しかしECを運営していると、思いもよらぬ使い方をしていたり、ECならではの意外なニーズに気づいたりします。

例えばワインを販売している実店舗の場合、ほとんど1本ずつしか売れていなくても、ECでは「まとめ買いでストックしたい」というニーズがあったりします。もしそういったニーズに気づくことができたら、ネットショップではまとめ買いに力を入れるという戦略がとれます。

このようなターゲット顧客のニーズを理解するには、競合他社の商品レビューが参考になります。「重いワインを玄関まで運んでもらって嬉しいです」という文章から、まとめ買いの需要を見出せるといった具合に、消費者の率直な感想にヒントが隠れていたりします。

トレンドの把握

開業の時期からトレンドをつかめると、ネットショップの成長も早いです。

トレンドを調査する際の大切なポイントとして、最新の情報を調査することを心がけましょう。近年の流行の移り変わりは本当に早く、情報の鮮度については見極めが必要です。食パンもタピオカも、物凄い人気となって次々と専門店ができましたが、もはやほとんど見向きもされません。

最新のトレンドをキャッチするには、やはりSNSを調査するのが一番でしょう。投稿されている内容を研究することで、購買行動を詳しく知ることができます。最新の動向や変化を捉えるため、このような調査は開業後も定期的に行うことが望ましいです。

ネットショップ開業前の戦略策定

ネットショップ開業前の戦略策定

市場調査で得た情報を元にすると、効率的に利益を得るための戦略を立てることができます。そしてネットショップを成功させるためには、開業前から販売戦略を立てておくことが必要不可欠です。

EC市場でも、マーケティングの基本的な考え方はオフラインと一緒です。ただし実店舗と共通する部分と異なる部分があるため、混同せずにしっかりと切り分けて考えることがポイントです。以下では一般的なマーケティング戦略の策定方法に加えて、ネットショップならではの注意点などを交えて解説します。

市場の細分化と選定

市場調査をしっかりと行えば、市場全体の大まかな理解はできているはず。次のステップとして、その市場をさらに細かく分解できないか考えてみてください。

現代において、全く開拓されていない市場というのは少なく、たいていの市場には既に強力なライバルがいるはず。資金面や人員面で大きな差があるなら、まともに戦っても勝ち目が無いかもしれません。

そこで細分化した小さな市場から、自社の得意分野を選んで経営資源を集中させることで、勝算が生まれないかを考えてみるのです。具体例として、アクセサリー市場を挙げてみましょう。

一口にアクセサリーと言っても、年代別、用途別、価格帯別…といった要素で、いろいろなジャンル(=市場)に細分化できます。もし自社が「指輪の加工技術」を得意としているなら、その強みを最も活かせる「高級指輪市場」に全力を注ぐことで、活路を見出だせないか検討してみるのです。

こうしたターゲット市場の選定こそが、ネットショップ開業後の運命の分かれ道、と言っても過言ではありません。

差別化戦略

引き続き自社の強みと、市場調査で得られた情報を元にして、ターゲット市場での差別化戦略を深堀りしていきます。中小事業者様がECで成功するためには、この「差別化」こそが肝要になる部分です、

実店舗における差別化要因としては、立地、営業時間、品揃え、価格などが挙げられます。しかしネットショップにおいて、立地や営業時間といった要素は、実店舗ほどには大きく影響しません。逆に品揃えや価格といった要素は、もちろん業界や戦略にもよりますが、売上や集客に直結し、実店舗よりもシビアな影響が出る部分となります。

さらにページデザイン、商品説明文、電話・メールでの顧客対応など、EC独自の差別化要素が発生します。実店舗との違いを理解し、どのような点で競合と差別化していくか、店舗の方針を決めてブレないことが大切です。

ターゲット市場を決定すると、直接的なライバルの姿が浮かび上がってきます。競合についても、調査結果を元によく分析しておくことで、勝ち目の薄い戦いを挑んでしまう失敗を防げます。そして市場における自社の立ち位置を明確にして、ECで成功する可能性を高めることができるのです。

ネットショップ開業前のチームづくり

ネットショップ開業前のチームづくり

ネットショップで成功するポイントの1つは「人」です。これもECに限った話ではありませんが、人員リソースをどれだけ有効に活用できるかは重要な要素です。人材を集め、見極め、そして育てることは、あらゆる事業の成長において不可欠と言えるでしょう。

チームの編成

ECで必要になる業務は思っている以上に多岐にわたり、それぞれに専門性が要求されます。

マーケティング、商品開発、顧客対応、在庫管理、受注処理、出荷作業…などなど、場合によっては開業直後からかなり忙しいです。当初はギリギリ一人でこなせたとしても、売上が少し軌道に乗ってくるだけで、他のスタッフのサポートが無くては回らなくなってくることでしょう。

そこである程度の売上を最初から見込んでいるなら、開業前からEC部門のチームを編成しておくことをおすすめします。この組織づくりもまた、ネットショップの長期的な成功に直結する要素と言って過言ではありません。

担当の割り振り

とはいえ万全のチーム体制を整え、いざネットショップのスタートを切るというのは、中小事業者様にとってなかなか難しいことかと思います。十分なリソースが用意できなかったり、主力事業と並行しながらの運営になる場合も多く、EC専属のチームを編成できる事業者様は決して多くありません。

そのような場合は、開業前から業務や人員体制を社内で共有し、担当者の役割を明確にしておくことが必要です。該当するスタッフには、EC事業の重要性を説明し、理解を得るためのコミュニケーションを図りましょう。

他の業務と兼務されるスタッフがいる場合は、負担のバランスにも気を配る必要がありますね。

社内での協力体制構築

EC事業は良くも悪くも、組織内での新風となることが多いです。そのため既存事業部門とのハレーションや、セクショナリズムといったマイナス要素が発生しがち。

事前の対策として、EC事業の重要性を社内全体で理解してもらう、インターナルマーケティングと呼ばれる手法を実践していきましょう。ECは独立した販売部門のように思われがちですが、他部署との密接な関わりを持たなくては、その真価を発揮することができません。

たとえ人員体制が十分でなくても、部門間でスムーズな協力関係が構築できるような仕組みは、ネットショップの開業前から最低限考えておくべきです。

ネットショップ開業前の人材育成

ネットショップ開業前の人材育成

ECは誰でも成功できる可能性があるとはいえ、いきなり運営できるわけではありません。ネットショップで必要なスキルは、実店舗と様々な面で異なるため、ECならではの知識やノウハウを勉強する必要があります。

従業員がEC運営のスキルを持っていればベストですが、現実的にはそうでない事も多いはず。他の分野で活躍してきた頼もしい従業員たちも、パソコン操作に苦手意識があったり、前向きに取り組めない場合もあるかもしれません。

そこで大切になるのは、担当者の人材育成とモチベーション向上の仕組みづくりです。組織として従業員のスキルアップをサポートし、長期的な貢献意欲を持ち続けられるようにしましょう。

いくら優秀な人材を育成しても、次々に辞めていってしまうような環境であれば、長期的にEC店舗を成功に導くことはできません。それどころか最悪の場合、組織の混乱を招いて大失敗につながってしまいます。

EC経験者がいる場合

EC運営経験がある人材や、デジタルマーケティングに強い人材がいるのであれば、立ち上げ期において頼もしい存在となるはずです。ネットショップを成功させるため、その知見を存分に発揮してもらうべく、彼らの言葉に耳を傾けましょう。

経営者やマネージャーが十分な時間を割けないような状況であれば、責任者として現場の指揮を任せることも選択肢の一つです。

EC経験者がいない場合

経験者がいないからと言って、ネットショップの開業をあきらめる必要はありません。

自分たちの手でノウハウを溜めながら、少しずつ店舗を成長させていくこともできます。売上が小規模なうちは、受注や出荷といったバックヤード業務も少ないので、既存のリソースだけでネットショップを運営していくことも十分可能であると思います。

ただし、EC運営は決して簡単ではありません。成果が出るまで時間がかかるという覚悟と、努力と勉強を常に怠らない姿勢が不可欠となります。

ECで重宝するスキル

例えば以下のようなスキルを持っている人材は、EC運営において強力な戦力となるでしょう。ECを運営する企業であれば、いずれも社内に一人は欲しいところです。アウトソーシングを活用するという手もあるので、人材育成が難しい場合は積極的に検討しましょう。

コーディング

コンピューターに理解させる言葉をコードと呼び、その言葉を記述することをコーディングと呼びます。ネットショップの開業・運営においては、特にHTMLやCSSといった言語は、頻繁に使われることが多くなります。他にもJavaScriptやPHPなどはよく利用されており、記述ができるコーダーは重宝されます。(※HTMLの記述は、正確にはマークアップと呼ばれます)

ページデザイン

ネットショップのデザインは、商品の魅力を最大限に表現するために非常に重要な要素です。同じ商品でも、デザインによる見せ方が異なるだけで、売れ行きに差がつくことは珍しくありません。多くの場合、デザイナーはコーディングもできることが多いです。加えてWEBマーケティングの理論を理解していると、さらに頼もしい存在となってくれるでしょう。

ライティング

商品説明の文章や、コンテンツの文章を作成できるスキル。デザインと同様に、文章によって売れ行きが変わる場合も多く、お客さんの心を動かす文章が書ける能力は大切です。生成AIの登場により、今後はECの文章作成も自動化が進むことでしょう。しかし購買意欲に直結する、ユニークでエモーショナルな文章制作は、まだまだ時間がかかりそうです。

ネットショップ開業前の数値計画

ネットショップ開業前の数値計画

いつも行列のお店が突然閉店。あんなに繁盛してたのに、実は全然利益が出ていなかった…なんて話、聞いたことありますよね。いくら売上を獲得していても、利益をしっかり出さなければ、事業を長期的に継続することは難しいのです。

その一方で、時には利益度外視の施策を打たなければ、事業を成長させられないというタイミングもあります。この辺のバランス感を見極めるのが、経営の非常に難しいところだと思います。

そこできちんとした数値計画があれば、見通しを立てて数字のコントロールがしやすくなり、失敗の可能性を低下させることができます。ネットショップにおいても、売上や利益の計画性は重要です。以下ではEC事業における数値計画と、利益やコストの考え方についてお話しします。

数値計画は月次で管理を

商品をいくらで売って、どれだけ費用がかかって、どれだけ利益が出るか。売上や利益の数値計画は、ネットショップの開業前に必ず作成しておきましょう。

この時のポイントは、必ず一ヶ月単位の月次で作ること。そして開業後は、数値計画と実績がどのようにズレたか、検証にかける時間を毎月確保し、定期的なチェックを忘れないでください。

例えば変動費はどれくらいの割合で、固定費はどれくらいかかっているか。利益率に大きな変化はないか。入金や支払いのスケジュールは問題ないか。このような数値計画のチェックを継続していくことが、ECで失敗しないための非常に重要なポイントとなります。

なお一般的な取引と違って、ECでは入金・支払のタイミングが変則的になることも多いので、資金繰りにも十分に注意してくださいね。

集客コストを捻出できるか

ネットショップを開店したら、日本中からお客さんを集められる!というのがECのメリットですが、多くの場合そんな簡単にはいきません。

悲しい事実ですが、立ち上げ直後のネットショップは、お客さんから認識すらされていない状態がほとんど。自分からお客さんを集めるアクションを起こし、何らかの形で集客ができなければ、ECでは失敗する可能性が高いでしょう。

具体的な集客方法としては、以下で述べる広告をはじめとして、SNSやSEOなどの様々な手法が考えられます。

しかしながらたいていの場合、集客には大きなコストがかかります。日々の売上から仕入原価や人件費等の経費を引いて、残った利益から集客コストを捻出していくことが、ほとんどのネットショップにおける前提条件です。

もし数値計画を作った上で、集客コストをかけるための十分な利益が出ないなら…残念ながらECへの参入自体、もう一度考え直した方がいいかもしれません。

広告費は無理なく臨機応変に

ECを含むWEBマーケティングの世界で、広告は強力な武器となります。時には広告による集客を、利益度外視で取り組まなければいけないタイミングもあるでしょう。

しかしよく考えずにガンガン投資するような行為は、あまりにも危険すぎるので絶対にやめましょう。逆に広告費をケチりすぎると、いつまで経ってもお客さんが来ないという、悲しいネットショップになってしまうかも…。

ちなみに支援先の企業様からは、「広告費は売上の◯%」というルール設定を聞くことがあります。この考え方が失敗への引き金となり、リスクもしくは機会損失を招くこともあります。広告にかける適切なコストは、そんなに簡単に決められるものではありません。

柔軟かつ適切に投資金額を調整し、適した広告を選ぶことが、ネットショップ成功の大きな近道となるでしょう。

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