データ分析が中小企業経営を進化させる!事例をコンサルが解説します

データ分析が小売店舗を進化させる!中小企業の事例をコンサルが解説します

中小企業がこれから生き残っていくために、鍵となる要素の一つが「データ活用」です。

近年のビジネス環境の変化はますます激しくなっており、中小企業にもデータを柔軟に活用する力が求められています。データを活用できている会社とそうでない会社では、業績に大きな差が生まれることも珍しくありません。

そこで今回は、データが注目される時代背景と、それを活用することで得られる具体的なメリットについて、データ活用を得意とする経営コンサルタントが解説していきます。

中小企業を経営されている皆様が、データに基づく戦略を取り入れることにより、今まで気づかなかった一手を見つけるためのヒントをお届けできれば幸いです。

これからの時代の経営に必須となるスキルを、ぜひ一緒に考えていきましょう。

中小企業にデータ活用が求められる理由

中小企業にデータ活用が求められる理由

現代はデータの時代と言われています。

テクノロジーの進化により、あらゆる業界で膨大なデータが生み出されるようになりました。こういったデータを経営でうまく活用していくことは、大企業だけでなく中小企業にとっても、競争力を維持するための重要な要素となっています。

また顧客のニーズが多様化し、変化のスピードが加速していることも、データ活用に取り組むべき理由の1つです。もしデータを意識せず、経験や勘だけに頼った経営をしていると、こういった変化に対応するのはいっそう難しくなっていくでしょう。

データによって、中小企業は様々なメリットを得ることができます。

例えば売上データの蓄積からは、顧客の購買傾向や市場のトレンドを的確に把握することができます。「どの商品が、どの時間帯に、どの客層に売れているのか」を分析することで、プロモーション施策の最適化や在庫管理の効率化が図れます。

さらにデータをうまく活用すれば、コスト削減や生産性向上にもつながります。リソースが限られる中小企業にとって、無駄を削減し、効率よく資源を活用することは経営の鍵となるはずです。

これからの時代、データ活用は特別なスキルではなく、企業活動におけるごく基本的な取り組みとなるでしょう。

以下では基本的なデータ分析の手法について、簡単に解説していきます。

中小企業で役立つデータ分析方法

中小企業で役立つデータ分析方法

データ分析と言っても様々な手法があるので、どのように進めたら良いか迷ってしまいますよね。そこで中小企業においてもこれだけは抑えておきたい、3つのフレームワークを活用事例とともにご紹介します。

RFM分析

RFM分析は、たくさんの顧客をセグメント分けすることで、それぞれのセグメントの特性に合わせた効果的な販促活動を可能にする分析手法です。

具体的なやり方は別の記事でご紹介しますが、顧客を「最近の購入日時(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの要素で分類することで、優良顧客や離反リスクの高い顧客を見つけ出すというものです。

RFM分析の実際の事例として、ECサイトを運営する中小企業の活用方法を紹介します。

この会社ではRFM分析を用いて、頻繁に購入かつ購入金額の高い優良顧客層を特定し、彼らに向けて限定クーポンを配布するという施策を実施。一方、最近購入がない顧客にはメールで再訪を促すことで、休眠顧客の再活性化に繋げるという手法をとりました。

このようにRFM分析を駆使することで、顧客の属性に応じた効率的なアプローチをとることができるのです。

ABC分析

ABC分析とは、売上金額や販売数量により、商品や顧客をAランク、Bランク、Cランクに分け、重要度を把握するための手法です。重要度(売上貢献度)の高い順に3つに分けることで、効率よく販促施策を行うことができます。

各ランクに属する商品は以下のように取り扱いを判断します。

  • Aランク(優先順位:高) 重要商品/顧客として、重点的に取り扱う
  • Bランク(優先順位:中) 継続的に取り扱いを行い、Aランクへ引き上げる施策を実施
  • Cランク(優先順位:低) 撤退商品/顧客の候補として検討をする

以下はある小売店舗のABC分析の事例です。

この企業では、売上の80%を構成する「Aグループ」の商品だけに注力したプロモーションを行い、販売効率の改善を図りました。また一方で、「Cグループ」の商品のうち、在庫が多いものを売り切るための施策を実施し、回転率を向上させることで在庫コスト削減を実現しました。

アソシエーション分析(バスケット分析)

アソシエーション分析はバスケット分析とも呼ばれる手法で、同時に購入される商品の組み合わせを明らかにするのが目的の分析です。

「Aを買った顧客はBも買う可能性が高い」といったルールをつきとめることで、ついで買い(クロスセル)やセット販売の提案に活用します。

あるパン屋さんがアソシエーション分析を実施した事例では、パンと特定のジャムが頻繁に一緒に購入されていることを発見。この事実から、パンとジャムのセット販売による訴求施策をスタートし、客単価の向上を実現することができました。

データ分析手法の使い分け

このようにRFM分析で「顧客」を、ABC分析で「商品」を、アソシエーション分析で「組み合わせ」を分析し、現状を把握することで、それらに基づいた効果的な施策を検討することができます。

いずれも比較的難易度が低い一方で、成果につながりやすい手法と言えます。データ活用に慣れていない事業者様は、まずこれらの分析から始めてみるとよいでしょう。

以下では私の支援先企業の実際の事例を元にして、データ分析をどのように活用しているかをご紹介していきます。

事例1:美容室の出店場所選定データ活用

事例1美容室の出店場所選定データ活用

東京都内を中心に美容室を経営する経営者様からのご依頼を頂き、新規店舗を出店する際の出店場所選定の支援を行いました。

状況

当社は都内で5店舗の美容室を展開する中小企業です。

店舗間で売上に多少のばらつきはあるものの、会社全体の業績は右肩上がりで伸びており、更なる成長に向け、次なる出店先を検討していらっしゃいました。ただ、出店場所選定においては、これまで知人の不動産業者の紹介に頼っており、具体的なデータに基づいた選定プロセスが不足しているという課題を抱えておりました。

そこで客観的なデータに基づく、出店場所選定の支援を行いました。

具体的なアクション

経営者様の頭の中には、既に数カ所の出店候補地がありました。そこで客観的なデータを元にして、それぞれの候補地についての評価を行いました。

まず初めに、既存店舗と新店舗出店候補地について、以下のデータを収集します。

  • 既存店舗と新店舗出店候補地の商圏内人口、性年代別人口属性、世帯数
  • 新店舗出店候補地の商圏内の競合店舗数、及び価格帯の分布
  • 新店舗出店候補地のスタイリスト数

これらのデータを元に、以下の2つの指標を算出しました。

  • 1店舗あたりの見込み顧客数
  • 座席1席あたりのスタイリスト数

候補地を選ぶにあたり、「スタイリストの集まりやすさ」は特に重視すべきポイントになりました。

というのも、当社はお客様からの来店予約があるにもかかわらず、スタイリストがいないことでお断りせざるを得ない、という問題が発生していたのです。美容業界も深刻な人手不足に悩まされており、スタッフがいないことで機会損失に繋がるケースは珍しくありませんでした。

そこで大手美容予約サイトの情報を元に、「1席あたりのスタイリスト数」を独自に算出。新店舗出店候補エリア内で働くスタイリスト数を数値化することで、「求人のしやすさ」を可視化しました。さらに既存店舗と新店舗出店候補地について、データの比較を実施させていただきました。

成果

以上のようなデータ分析の結果、既存店舗で特に業績が良い店舗と、独自に算出した指標の間に相関が認められました。

データによる合理的な判断材料ができたことで、複数の出店候補地の中から1つに絞り込むことができ、経営者様にも大変満足していただきました。また新店舗選定における客観的な基準が明確になり、今後の物件探しの指針を確立することができました。

このようにデータを活用し、客観的な数値に基づくことによって、意思決定の判断材料を生み出せることも大きなメリットです。

事例2:ECサイトの顧客購買データ分析

事例2ECサイトの顧客購買データ分析

大手ECモールで食品の販売を行っている事業者様より、データ活用のご依頼を頂きました。

状況

これまでにデータ活用の必要性は感じているものの、実際に分析などを行ったことがなく、今回が初めての試みとのことでした。依頼を頂いた時点では、課題が明確に定まっている状態ではありませんでしたので、ご提供頂いた2年分の購買データをもとに、現状を把握し、課題を特定するための探索的な分析を行いました。

具体的なアクション

今回の分析内容は以下の4つです。

  • 季節ごとのバスケット分析による併売状況の把握
  • 購入金額と購入回数の分析による優良顧客の把握
  • 新規顧客がリピートする割合の把握
  • 2年間の購買データの比較による優良顧客の購買傾向の分析

これらの分析を行うことで、現状を把握しつつ取り組むべき課題を特定する、というアプローチをとっていきました。

成果

上記4つの分析を行い、季節ごとの併売状況の把握、優良顧客の把握、リピーターの割合、優良顧客化した顧客の購買傾向の把握を行いました。その結果、以下のような示唆を得ることができました。

  • 全体的に単品で購入される割合が高く、併売率が低い
  • 年間に2回以上購入する顧客の割合が少なく、リピート率が低い
  • 2年間の購買データを比較すると、優良顧客の入れ替わりが起きている
  • 優良顧客化した顧客は、野菜だけでなくその他食材を購入する傾向が高い

以上の分析結果を事業者様に報告し、改善策の検討を提言したところ、経営者と担当者の方から以下のようなお声を頂くことができました。

「自店舗の状況を数値で初めて明確に把握できました!」

「これまで感覚でリピーターの存在などを意識していましたが、実際にリピート率や優良顧客、優良化した顧客の購買傾向などを可視化してみると、どの顧客が店舗の売上を支えてくれているのか、リピートの状況がどの程度のものなのかが具体的に分かりました。」

「離反してしまった上位顧客を改めて把握し、その離反理由について検討をすることが出来ました。また優良顧客化した顧客の傾向を掴むことで、プロモーション施策を見直す方向性が見えてきました。データ活用の重要性を実感しています!」

このようにデータ活用を実際に取り組んでみたことで、今後の事業展開に寄与する気づきを得られたご様子でした。

今回の事例では、特に明確な課題がない状況ではあったものの、探索的な分析を行うことで課題が明確となりました。このようにデータ活用を用いることで、今後の販売戦略にいて効果的な打ち手を導き出すことが出来る場合もあるのです。

事例3:生鮮食料品店のPOSデータ分析

事例3生鮮食料品店のPOSデータ分析

「商店街デジタル化推進事業」の一環として、商店街加盟店向けに実施したデータ活用研修がきっかけで、ある生鮮食品スーパー様のご支援を実施させていただきました。

状況

当商店街では、まだまだデータ活用が進んでいるとは言えない状況でした。そこでまずはデータ活用に興味を持ってもらえるよう、データ活用の全体像をお伝えしました。

その上で、POSレジを導入していた商店街内の生鮮食料品スーパー様のPOSデータを分析させていただき、データを分析することでどのようなことが分かるのかをご紹介しました。

具体的なアクション

研修では、データ活用の効果やメリットなどの全体像を解説しつつ、POSデータを用いた簡単で分かりやすい以下の2つの分析をご紹介しました。

  • 売れ筋商品・死に筋商品を把握するABC分析
  • 併売状況を把握するバスケット分析

成果

データ活用の全体像を理解していただいた後、POSデータ分析から以下の結果を得ることができました。

  • 売り場の約半分の商品で売上の9割を構成している
  • 売上貢献度の高い商品カテゴリーと、売上貢献度の低い商品カテゴリーを把握できた
  • 特定の商品カテゴリーに死に筋商品が集中している
  • 今回特定した死に筋商品の入れ替えを検討することで、売り場スペースの効率化、キャッシュフローの改善に繋がる
  • 併売状況としては、商品カテゴリー内の併売が多く、カテゴリーを横断した併売が少ないことが分かった

研修にご参加頂いた商店街事業者様の業種は様々でしたので、「POSデータ分析」への関心の度合いはまちまちでした。一方で、当の生鮮食料品スーパー様の関心度合いは高く、引き続きPOSデータ分析の活用に取り組んでいくこととなりました。

中小規模の小売店舗ほど、POSデータなどを上手に活用し、効率的な経営を目指すことが大切です。

勘や経験だけに頼るのではなく、売れ筋商品やお客様の購買傾向をデータでしっかり把握することで、無駄のない仕入れや効果的な販促が可能になります。特にリピーターの動向を知ることで、より満足度の高いサービスを提供でき、長く愛されるお店づくりにつながります。

当スーパー様は移転を検討しているところですが、移転時および移転後の店舗運営において、POSデータ分析の活用方法を引き続きご支援させて頂くことになっています。

データ活用の時間がない場合の秘策

データ活用のための人や時間が足りない場合

これまで書いてきたように、データ活用は中小企業様にとって重要なものです。

その一方でデータ活用については、「やる時間がない」「やり方がわからない」といったお声をよく聞くのも事実。データ活用の重要性を認識しながら、やりたくてもできないというジレンマを抱えている経営者様も多いことでしょう。

もしそういったお悩みがあれば、データ活用を外部にアウトソーシングしてみるのも有効な手段です。

エクト経営コンサルティングでは、統計学を駆使するデータ活用のプロフェッショナルにして、経済産業省の登録する中小企業診断士と提携。単なるデータ活用にとどまらず、経営全体の課題や解決策を視野に入れた、本当に価値のあるサポートを実現しています。

さらに中小企業専門のコンサルタントオフィスとして、同業他社と比べても圧倒的にリーズナブルな料金体系を実現。

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