中小企業の生産性向上の課題と解決策
中小企業の生産性向上は、AIやITツールを導入しても、業務量が変わらないといった点で頓挫します。生産性とは一人あたりが生み出す付加価値のことで、道具を足すだけでは上がりません。まず「やめられる仕事」と「人でなくてよい仕事」を切り分け、残った仕事の手順を揃えてから道具を選ぶ。この順番が入り混じってしまうと、現場はただ業務が増えただけと感じてしまいます。
生産性向上に関するソリューション一覧
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なぜ、ツールを入れても現場は楽にならないのか
生産性向上の相談は、多くの場合「人が足りない」という状況から始まります。採用が難しい以上、今いる人数で回す方法を探すのは合理的な判断です。しかし、そこで最初に検討されるのが道具の導入である点に、つまずきの原因があります。
既存のやり方を残したままツールを足すと、紙と画面の両方に記録する二重管理が生まれます。現場から見れば仕事が増えているため、使われなくなるのは当然の結果です。減らすべき業務を決めないままの導入は、効率化ではなく作業の追加になります。
順番は、やめる・まとめる・任せる・仕組みにする、そして最後に道具を選ぶ、です。加えて、作業時間や在庫、廃棄といった数字を測っていなければ、効果が出たかどうかも判断できません。測ることは、改善の前提です。
生産性向上の主な課題
業務効率化・プロセス改善 — 「やめる」から始めないと、効率化は積み上がらない
効率化というと手順を速くすることに意識が向きますが、成果が大きいのはやめる判断です。誰も見ていない日報、二重に作られている集計表、念のため続いている確認作業——長く続いた業務ほど、目的を確かめないまま残ります。まず何のためにやっているのかを問い直し、必要のない工程を落とす。その上で残った仕事の手順を揃えると、担当者が変わっても品質が保たれる状態に近づきます。
実際に、従業員2名で12席を回していた飲食店では、新しい設備や人員を増やす前に、メニューの整理と人員体制の見直しから着手しました。忙しい時間帯にだけ人手を補う形に切り替えるなど、その規模で続けられる方法に絞り込んでいます。
IT導入・ツール活用 — 使われない道具は、選び方ではなく前提の問題
導入したツールが定着しない原因は、製品の機能より前段にあります。今の業務のどこを置き換えるのかが決まっていないまま入れると、従来の作業に入力の手間が上乗せされるだけになります。選ぶ前に確認したいのは、誰の、どの作業が、どれだけ減るのかです。小規模な事業ほど一人が複数の役割を兼ねているため、一部分だけを自動化しても効果が体感されにくいという事情もあります。
導入の負担を下げる工夫も選択の材料になります。飲食店向けのアプリには、専任のIT担当者や特別な機材を必要とせず、いま使っているスマートフォンだけで始められるものもあります。POSや会計ソフトを入れ替える必要がなく、無料のプランから試せるため、小さく確かめてから広げるという進め方が可能です。
DX推進・業務デジタル化 — 紙をなくすことが目的ではない
デジタル化の目的は、紙を画面に置き換えることではなく、記録した情報を判断に使えるようにすることです。数字が手元に集まっていても、見る人と見る頻度が決まっていなければ、意思決定は今までどおり経験と勘に頼ることになります。逆に、小さな範囲でも数字が毎週見られている事業では、判断の速さが変わります。全社的な仕組みより、判断に直結する一箇所から始めるほうが続きます。
在庫管理・物流最適化 — 在庫は、倉庫ではなく現金の問題
在庫は現金が形を変えたものです。多く持てば欠品は防げますが、そのぶん手元の現金は減り、廃棄や値下げのリスクも抱えます。適正な水準は勘ではなく、動きの速い品と遅い品を分けて把握することで見えてきます。食品を扱う事業では、発注量の判断が廃棄ロスに直結するため、来客数の見通しと連動させられるかどうかが効いてきます。まず何がどれだけ動いているかを測ることが先です。
飲食店では、来店予測と在庫の推移を組み合わせて発注のタイミングと量を知らせる仕組みもあります。天気予報を見ながら最後は勘で決めていた発注を、数字で判断できる形に変えられるかどうかが分かれ目です。
残業削減 — 残業は、個人の頑張りではなく配置と手順で決まる
残業が減らない原因は、特定の人に業務が集中していること、繁忙の波に対して人の配置が固定されていること、そして手順が属人的で代われないことにあります。号令だけで削減を求めると、持ち帰りや記録されない労働に姿を変えるだけです。いつ、どの工程に、どれだけ時間がかかっているかを測るところから始めると、配置と手順のどちらに手を入れるべきかが見えてきます。
少人数の店舗では、繁忙の波に合わせて一時的に人手を補うという方法もあります。前掲の飲食店では、固定の人員だけで抱え込まず、必要な時間帯にスポットで働き手を入れる形を取り入れました。
実際の支援事例
生産性向上の課題に、実際にどう手をつけたのか。中小企業診断士が支援した事例をご紹介します(掲載の許諾範囲で、業種・規模のみ記載しています)。
人を増やす前に、メニューと人員体制を組み替えた
従業員2名で12席を運営。ランチの売上は1日あたり約2万円、原価率は約50%で、売上と利益がともに伸び悩んでいました。
売上と原価の構造を確認したうえで、客席数・メニュー・人員体制を見直し。メニューの整理と価格の見直しに加え、繁忙時にスポットで働き手を入れる形を取り入れました。
結果:少人数のまま続けられる運営の形まで、打ち手を落とし込み。
よくある質問
ITツールを入れれば、生産性は上がりますか?
導入だけでは上がりません。今ある業務にツールを足すと、紙と画面の二重管理が生まれ、現場の作業はむしろ増えます。どの作業を置き換えるのかを先に決めておけば、同じツールでも結果は変わります。効果は道具の性能より、導入前の整理で決まります。
まず何から測ればよいですか?
いま最も時間を取られている業務を一つ選び、その作業にかかっている時間を記録するところからで十分です。飲食や小売であれば、廃棄の量や在庫の回転も判断に直結します。すべてを測ろうとすると続かないため、改善したい一点に絞ってください。測っていない状態では、手を打っても効果があったのかどうかが分かりません。
小さな会社でもDXは必要ですか?
全社的な仕組みを入れる必要はありません。必要なのは、判断に使う数字が手元にある状態です。売上、在庫、作業時間のうち、経営判断に直結する一つを毎週見るところから始めれば十分に効果があります。範囲を広げるのはその後で構いません。
現場がツールを使ってくれるか不安です。
定着しない原因のほとんどは、現場の意欲ではなく、導入によって仕事が減っていないことにあります。従来の記録を残したまま新しい入力を求めれば、使われないのは自然です。何をやめるのかをセットで決めることが、定着の条件になります。
紙の管理を続けたままでも、改善はできますか?
できます。紙をなくすこと自体が目的ではないためです。まずは記録している内容のうち、実際に判断へ使っているものと、使っていないものを分けてください。使っていない記録をやめるだけでも負担は減ります。そのうえで、判断に使う数字だけを集計しやすい形に整えれば、道具を替えなくても改善は進みます。
費用はどのくらいかかりますか?
内容によります。月額数千円から使える業務ツールもあれば、業務の棚卸しから月次で伴走する支援は月額5万円台からが目安です(初回に現状診断を別途9万円程度で行う形もあります)。多くのソリューションが初回無料相談や無料プランを設けているため、まず現状の整理から始めることもできます。
何から手をつければよいか分かりません。
いま最も時間を取られている業務を一つ挙げ、その工程を書き出すところから始まります。書き出すと、やめられる工程と、人でなくてよい工程が見えてきます。道具を選ぶのはその後です。まず現状を整理するところからご相談いただけます。